葬式代のための終身保険は必要?FPが「高齢者には貯金」を勧める納得の理由

保険

こんにちは。FP1級パパのニーサです。

「残される家族に迷惑をかけたくない」

「自分の葬式代くらいは、保険で準備しておきたい」

高齢になってから、このような理由で終身保険への加入を検討する方もいるのではないでしょうか。

終身保険は、死亡保障が一生涯続くという特徴があります。そのため、葬儀費用や家族に残すお金を準備する目的で利用されることがあります。

一方で、高齢になってから新たに終身保険へ加入する場合には、若い世代とは違った注意点があります。

私自身、祖父母から保険について相談を受けた経験があります。

そのときも、「本当に保険で準備する必要があるのか」を一緒に考えました。

この記事では、高齢になってから終身保険への加入を検討するときに確認したいポイントを、保険料、資金の使いやすさ、相続税の3つの視点から解説します。

高齢になってからの終身保険は「保険料」と「受取額」を確認する

高齢になってから終身保険へ加入する場合、まず確認したいのが、最終的にいくら保険料を支払い、死亡したときにいくらの保険金を受け取れるのかという点です。

終身保険は、一生涯の死亡保障を確保できる商品です。

ただし、契約できる年齢や保険料、死亡保険金などの条件は商品によって異なります。生命保険文化センターによると、新たに契約できる年齢の範囲は生命保険会社によって異なり、80歳から85歳程度まで取り扱っている会社もあります。

高齢になってから加入する場合は、加入時の年齢を踏まえた保険料になるため、若いときに加入する場合とは保険料の負担が異なります。

そこで、加入を検討するときには、単純に「毎月いくら払うのか」だけを見るのではなく、

「保険料を最終的にいくら支払うのか」

「死亡した場合にいくらの保険金が支払われるのか」

を確認することが大切です。

例えば、仮に月3万円を10年間支払えば、保険料の総額は360万円になります。

一方で、死亡保険金が300万円の商品であれば、単純な金額比較では、支払った保険料の方が多くなります。

ただし、これは「終身保険は損」という意味ではありません。

保険には、貯蓄とは異なる保障という役割があるからです。

保険料を支払うことで、契約後から死亡保障を確保できることに意味があります。

そのため、

「支払った保険料より死亡保険金が多いか少ないか」

だけで判断するのではなく、

「自分は一生涯の死亡保障にいくらまで支払うのか」

という視点で考えることが重要です。

「葬式代」なら、預貯金という選択肢もある

葬式代を準備する方法は、終身保険だけではありません。

預貯金として準備しておく方法もあります。

保険に加入した場合、支払った保険料をそのまま自由に使えるわけではありません。

もちろん、終身保険を解約すれば、その時点で解約返戻金がある場合には受け取ることができます。

しかし、解約返戻金は契約内容や契約してからの期間などによって異なり、一般的には払込保険料総額を下回ることがあります。特に契約後の短期間で解約した場合などには、解約返戻金がまったくない、または少額になる場合もあります。

生命保険文化センターも、終身保険について、保険料払込期間中に解約した場合は、解約返戻金が払込保険料総額を下回ることがほとんどだと説明しています。

そのため、高齢になってから加入する場合には、

「将来必要になるかもしれないお金を保険料として固定してしまって大丈夫か?」

という点も考えておきたいところです。

例えば、

・住宅の修繕費

・介護施設への入居費用

・医療や介護に関する自己負担

・日常生活に必要なお金

など、老後にはさまざまな支出が考えられます。

葬式代として準備したお金であっても、本人が生きている間に大きな支出が必要になる可能性があります。

そのため、「葬式代を準備する」という目的だけでなく、「老後に必要な現金を十分に残せているか」まで考えることが重要です。

「死亡保険金の非課税枠」があるから加入する?

終身保険を検討するときに、よく話題になるのが相続税です。

死亡保険金には、一定の条件を満たす場合、相続税の非課税限度額があります。

国税庁によると、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金について、受取人が相続人である場合、一定の条件のもとで、

500万円 × 法定相続人の数

が非課税限度額となります。

例えば、法定相続人が3人であれば、非課税限度額は1,500万円です。

ただし、これは「終身保険に加入すれば誰でも1,500万円が非課税になる」という意味ではありません。

国税庁の説明では、死亡保険金の非課税限度額には一定の要件があり、相続人以外が取得した死亡保険金にはこの非課税の適用はありません。

また、そもそも相続税が発生するのかどうかも確認する必要があります。

国税庁の令和6年分の相続税の申告事績によると、死亡者数82,321人に対して、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は3,953人で、課税割合は4.8%でした。

もちろん、相続税がかからない人でも、死亡保険金によって遺産を特定の家族に渡しやすくなるなど、保険を利用する目的は考えられます。

しかし、

「相続税対策になるから、とりあえず終身保険に加入する」

という考え方ではなく、

「自分の財産状況なら、本当に相続税対策が必要なのか」

「死亡保険金を利用するメリットはあるのか」

を確認してから検討することが大切です。

高齢者が保険に加入するときは、時間をかけて検討する

高齢になってからの保険加入では、商品内容を十分に理解してから契約することも重要です。

金融庁の保険会社向けの監督指針では、高齢者に対する保険募集について、高齢者や商品の特性などを考慮し、きめ細かな対応やトラブルの未然防止・早期発見につながる取り組みを行うことが重要とされています。

例えば、親族などの同席、複数回の募集機会を設けること、申込み後に契約内容を確認することなどが例として挙げられています。

保険は一度契約すると、長期間にわたって保険料を支払うことがあります。

そのため、

「今日説明を受けたから今日契約する」

のではなく、

「保険料はいくらか」

「死亡保険金はいくらか」

「解約した場合はいくら戻るのか」

「保険料を払い終わるまでの総額はいくらか」

「自分が亡くなる前にお金が必要になった場合、どうなるのか」

を確認してから決めることをおすすめします。

私が高齢者の終身保険で大切だと思うこと

私は、高齢になってから終身保険への加入を検討する場合、最初から「必要」「不要」と決めるのではなく、保険に加入する目的を明確にすることが大切だと考えています。

「葬式代を残したい」という目的なら、終身保険だけでなく、預貯金で準備する方法もあります。

「相続税対策をしたい」という目的なら、まず自分の財産状況や相続人を確認し、死亡保険金の非課税限度額を利用する必要性を考える必要があります。

「家族に確実にお金を残したい」という目的なら、保険金の受取人や保険料負担者など、契約内容を確認することも重要です。

つまり、重要なのは、

「終身保険に入るかどうか」ではなく、「何のために、いくらのお金を準備するのか」

ということです。

まとめ

高齢になってから終身保険への加入を検討する場合、私は次の3点を確認することが大切だと思います。

1つ目は、保険料の総額と死亡保険金を確認することです。

月々の保険料だけを見るのではなく、最終的にいくら支払うのかを確認しましょう。

2つ目は、老後資金とのバランスを考えることです。

保険料として支払ったお金は、預貯金とは異なり、自由に使える資金ではありません。将来の医療、介護、住宅修繕などに必要な資金を十分に確保したうえで検討することが大切です。

3つ目は、相続税対策が本当に必要なのかを確認することです。

死亡保険金には一定の非課税限度額がありますが、誰でも無条件に利用できるわけではありません。自分の財産や家族構成を確認したうえで考える必要があります。

終身保険には、「死亡保障が一生涯続く」という明確なメリットがあります。

一方で、高齢になってから加入する場合には、保険料や解約返戻金、老後資金とのバランスなどを慎重に確認する必要があります。

「葬式代を準備したい」という気持ちだけで加入を決めるのではなく、

「保険で準備するのか、それとも預貯金で準備するのか」

を一度比較してみてはいかがでしょうか。

私自身も、保険は「入ること」そのものが目的ではなく、自分や家族にとって必要な保障を、無理のない負担で準備するための手段だと考えています。

参考にした公的・公式情報

国税庁

「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

「令和6年分 相続税の申告事績の概要」

金融庁

「保険会社向けの総合的な監督指針」

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